〜住宅金融公庫について〜 (住まいるクラブ 2001年10月号 特集記事) 今回は「住宅金融公庫について」です。 秋もいよいよ深まって、朝夕は少し寒さを感じることも多くなってきました。ここにきて、国内経済も紅葉が深まるがごとく、後退の色がはっきりしてきたこの頃、財布の紐を「ぎゅっと」固く閉めている方も多いのではないでしょうか。この後退局面を打開するには「構造改革しか無い!」と断言している政治家や研究者の方々も多いようです。そのようななかで、廃止の方向で、まっさきに議論されているのが、不動産取引にも大きな影響を与える「住宅金融公庫」の存在意義です。 ということで、今回は「住宅金融公庫」をはじめとした、住宅ローンについて考えていきたいと思います。 住宅金融公庫は廃止される? 現在のところは廃止されるとも、されないとも決まっていません。ただ、8月末に石原行革担当相の私的諮問機関の「行革断行評議会」では住宅金融公庫の廃止案を発表しています。また、小泉首相も同時期に国土交通省に対して日本道路公団と住宅金融公庫などの六つの特殊法人について、廃止・民営化案を早急にまとめるように指示しています。 それに対して、9月上旬に国土交通省はいくつかの住宅金融公庫の役割を提示して、「廃止することはできない」とし、「民営化については別途検討中」であると発表しました。 このように、現在では「改革したい派」と「したくない派」もしくは、「永田町」と「霞ヶ関」で綱引きが行われていて、今後の議論次第でどうなるかはっきりしないというところですが、いずれにしても、今までの形がそのまま維持されることは、国土交通省でも改革案を出していることから考えて、有り得ないと言っていいでしょう。 今までの住宅金融公庫の役割は? 住宅金融公庫(公庫)の大きな役割として国土交通省では「中・低所得者の計画的住宅取得を可能にする長期・固定・低利の融資を行う」「公平・無差別な融資を安定供給する」「住宅の質の向上や良質なストック形成に寄与する」ことであると発表しています。 公庫では、賃貸住宅等の建設のための資金の貸し出しも行っていますが、ここでは、住宅購入のための公庫という視点からみると、公庫の特徴は今のところ、民間では行われていない、「長期・固定・低利の融資」を行っているというのが一番の特徴といえます。実際に民間金融期間の住宅ローンでは公庫より低利で固定金利を提供しているところはありませんので、このことに魅力を感じて、公庫の利用を希望する不動産購入者は毎年多いのは事実です。 住宅金融公庫の何が問題なのか? 廃止・民営化の必要があるとされる大きな理由はふたつあるとされています。 ひとつは毎年、約6千億円投入している補給金が不要になることで、財政のスリム化につながることと、これまた民営化議論が激しい郵便貯金の運用資金「財政投融資」が70兆円を超えて使われていること。 もうひとつは、「民業圧迫」が避けられ、民間のビジネスチャンスが広がるということです。今年の3月末時点の住宅ローンの貸し出し残高は、公庫だけで37%を占めています。都市銀行、地方銀行と第二地方銀行を合わせても、36%弱という数字と比較すると、公庫が民業のいかに多きなライバルとなっていることがおわかりいただけるかと思います。 簡単に表現してしまえば「住宅ローンを国が補助する時代は終わったので民間にまかせよう!」ということでしょうか。ここ数年の動きとして、公庫は低所得者でも銀行より簡単にたくさん、低利で借りられるという利点は、多少薄れているのは間違いありませんので、このような意見が出るのもしょうがないのかもしれません。 今後はどうなるのか? 現在、公庫を返済中の方は返済先が公庫から民間金融機関に変わることは有り得るかもしれませんが、基本的には、今までどおりの予定された金額を返済していけば大丈夫でしょう。 それでは、これから購入を考えている人にとってはどうなのでしょうか。これからの住宅ローンについての一番の課題は、「固定金利の融資を不動産購入者層に安定的に供給できるかどうか」また「どこが、その役割を担うか」ということだと思います。 先にも触れたように現在では民間金融機関では全期間固定金利での住宅ローンをほとんど用意していません。これが、多くの人が公庫の融資を希望する原因ともなっています。したがって、仮に公庫を廃止、又は民営化するにしてもこのようなローンがなくなることは、住宅購入意欲の減退につながり、更なる景気後退の要因になりかねないのではないか。もし、公庫をなくしてしまったら、同じようなローンの提供が民間にできないのではないか。民間金融機関は不良債権処理でそれどころではないのではないか、という問題がつきまといます。 理想的な形は「民間金融機関が商品のバリエーションを増やして、希望する人には固定金利(より低利な)の商品を提供し。不動産購入者のニーズに合った選択の幅が広がること」です。公庫の役割はそうなるまでの「つなぎの役割」だと考えるのが良いのではないでしょうか。その「つなぎ」の役目が終わりに近いことは間違いなく、それが来年なのか、もう少し先なのかは、民間金融機関の大きな努力も必要ですので、今後の議論を待つしかなさそうです。 いずれにしても、公庫が来年からいきなり廃止になって、民間金融機関の提供するローンも現時点とまったく同じというような最悪な状況は現在の景気から考えて、まずないといえるでしょう。 住宅ローンを利用する場合の心得 それでは、今後、不動産購入とともに住宅ローンの借入を検討する場合にはどのようなことに注意すればいいのかを考えてみましょう。 @ 公庫を利用するなら今年度中が有利? 公庫が民間金融機関より多くの点で有利になっていますが、公庫のここ数年の傾向として、金利は別として借入額や借入条件は年々厳しくなっています。公庫だけに注目すれば、たとえ、来年度も存続したとしても、来年度よりも今年度の方が有利なのは間違いなさそうです。 国土交通省が提案する改革案も融資金額や条件が現在より厳しくなる方向で提案されていますので、公庫を利用できる可能性が高いエリアで希望する方や「購入するなら公庫」をという方は今年度中に利用した方が良いのではないでしょうか。 A それぞれのローンのメリットとデメリットを確認しましょう。 ・ 住宅金融公庫 今は借入金利が過去最低です。その金利が低利で、将来も変わらないというのは公庫の大きなメリット。民間金融機関が提供する商品よりは有利な点が多数有ります。 デメリットとしては11年目以降の借入金利が4%に上がることが決まっている段階金利になっていること。返済期間が長いと、固定金利のメリットが薄れてしまいますし、11年目以降に返済額が増えてしまいます。 もうひとつは購入を検討する幅が狭まることです。物件やエリアによっては公庫が使えない物件も多数あります。とくに中古物件での公庫利用率は新築に比較して、その不便さから、ぐっと下がります。 ・ 変動金利 借入時から5年間の返済額は変わりませんが、借入金利が年2回変動します。最初の5年間で金利が上がれば、次の5年間で返済額が上がることになります。 メリットは固定金利に比較すると借入金利が低く設定されていること。 デメリットは将来、借入金利が上がるリスクがあること。現在の金利は最低ラインイに近いので、将来は上がる確立の方が高い。ただし、金利が上がるということは、経済が良くなるか、インフレになるかの時なので、収入も上がるので金利上昇分には対応できるとも考えられる。 ・ 選択型 固定金利期間を利用者が選択し、固定期間が長い方が借入金利が高いという住宅ローンで、固定期間が終了した時点で、その時の金利情勢を見て、再度、固定にするか変動にするか、利用者が選択するタイプのローン。 メリットとデメリットはほぼ変動金利に似たもので変動金利と選択型どっちが得なのかは、ある程度時間が過ぎてからでないと判らないというのが正直なところ。 ここでは基本的なことしか言えませんが、その他にも、公庫、民間住宅ローンの特徴、メリット、デメリットはたくさんありますので、詳しくは、担当不動産営業にじっくり聞いてみましょう。 @ これからの中長期的な計画をしっかりたてましょう。 例えば! 「購入したら、事情がなければ一生、住み続ける。」 「とりあえず、住宅ローンは利用するが、少しでも余裕ができたら、繰上げ返済をして、返済期間を極力、短くする。」 「借金も財産、予定、通り借入期間いっぱいで返し ていく。」 「まずは購入して、将来は買い替えを検討する。」 「購入して居住するが、転勤の場合は貸すことも。」 「将来的には増築も考える必要が出てくるかも。」 このような考えは、家族構成や年齢や地域によって考え方が まったく違います、将来的なプランや予定によっては、時には メリットがデメリットに変わってしまうこともあります。場合 によっては専門家と相談しながら、どういう借入が一番有利な のか、購入する不動産の種類や地域も合わせて、自分たちに合 った計画を立てることが大切です。 今回は公庫を通して、銀行ローンについて考えてきました。最近の傾向として、過去のように企業や個人が公的な部分で守られてきた時代は終りが近いということです。これからは多種多様な選択のなかから自分自身のリスクで選択する時代がいよいよやって来たということでしょう。 住宅ローンも賢く、選んで、賢く活用する時代です。これを機に、住宅についての、「これから」を見直してみはいかがでしょうか! |