〜「住宅の性能表示制度についてA」〜 (住まいるクラブ 2002年12月号 特集記事) 寒くなると、少しでも早く暖かいところへ行きたいという気持ちからでしょうか、それとも年末で仕事や用事で忙しさが普段より増すのでしょうか、人々の動きもなんとなくせわしなく感じられるようになりました。 これからは忘年会、クリスマス、仕事納め、大掃除などと1年の締めくくりへ向けた行事も目白押し。お鍋もおいしい季節ですが、飲みすぎや食べすぎには注意して体調には気をつけたいですね。 不良債権処理、デフレ対策、補正予算、株価、イラク情勢、北朝鮮、税制改正論議、松井選手とやきもきさせられることが多い最近。これらのなかで、年末までにはっきりとした方向が出ている事柄がいくつあるでしょうか。早急な方向づけばかりを望みませんが、遅くても、良い方向に風が向くように期待します。 今月は前回の続編として、「品確法」の中古住宅に関する「住宅性能表示制度」についてお送りいたします。この制度の新設は、不動産の中古住宅市場のなかでは、緩やかではありますが良い方に流れている風のひとつです。不動産の購入や売却を考えている方には知っておいて欲しい内容ですのでお楽しみに。 今月の <注目 NEWS> 「住宅性能評価制度の利用件数に大きな伸び」 国土交通省は10月下旬に、住宅性能評価を行う全機関を対象に行われた住宅性能評価の調査結果を発表した。 調査結果によると、平成14年8月の設計住宅性能評価、建設住宅性能評価の受付戸数、交付戸数ともに制度がスタートした前年同月と比較して大きく増加した。
<トレンド> 住宅性能表示制度導入後、順調に利用者が増えていることがうかがえる。今年の9月にスタートした中古の住宅性能表示制度の利用者がどれくらいになるのかも楽しみ。 同時に行われた調査で、平成14年8月単月の設計住宅性能評価書の交付を受けた建築主の割合を見ると戸建住宅に関しては61%が個人(グラフ参照)となっており、この制度が1戸建住宅に ついては個人を中心に普及してきていることも示している。 一方で、共同住宅についても普及率は高まっているが、マンション分譲に基づく利用が高いため制度の利用者は会社が76%と圧倒的に多い。 平成14年8月に設計住宅性能評価書を受けた 建築主の属性(戸建住宅) ![]() 今月も「住宅の品質確保の促進等に関する法律」通称「品確法」に関する内容についてお話をすすめてまいります。前回は新築住宅が中心でしたが、今回は中古住宅を中心お送りいたします。 これは今年の8月に導入された制度ですので普及するのはこれからですが、今後の中古住宅市場の活性化や安全性を法律面からバックアップするものです。 新築住宅における品確法 それでは前回で詳しく触れた、内容について簡単に復習しておきましょう。新築住宅についての品確法の中心は @10年間のかし瑕疵担保責任 A住宅性能表示制度 B紛争処理体制の確立 でした。 @は基礎や柱、雨漏り等について建物の引き渡しから10年間は保証することが義務づけられましたというもの。 Aは建物を設計段階で一定基準に従って性能を評価する「設計性能評価」と施工段階でもチェックを行う「建設性能評価」の二種類の評価制度からなります。 いずれも国から指定を受けた第三者機関が調査を行い、評価書を交付します。 Bは万一、トラブルが生じたときの紛争処理機関を設置し、より速やかな解決を目指すというもの。 新築住宅については以上の三つの内容が制度の中心です。 今月の<注目ニュース>でお伝えした、住宅性能表示制度とはここでいうAのことで。一戸建て住宅については個人の性能表示制度利用者が6割を超えているということは、個人がハウスメーカーに注文するときに、その内容を第三者機関にチェックしてもらおうという意識が高まっているということがいえます。 中古住宅の性能表示制度 平成12年にスタートした品確法。今までは新築住宅だけがこの法律の対象でしたが、今年8月の品確法施行規則の一部改正により、9月から中古住宅の評価機関の指定が行われていますので、既存(中古)住宅についても「性能表示制度」が適用されるようになりました。 この制度を利用する場合は建物の所有者、買主もしくは仲介業者が申請人となることができます。買主か仲介業者が申請人となる場合には所有者の承諾が必要となります。 それでは、内容について確認してまいりましょう。新築住宅の場合と若干違いがあります。 中古住宅の検査と性能表示 中古住宅についての制度の適用は二つの部分にわかれます。 <現況検査> 各部のひび割れなどの劣化状況を調べ、詳細な調査や補修が必要かどうかを判定する必須部分(現況検査により認められる劣化等の状況)と申請者の任意で腐朽やシロアリ被害検査を実施する特定現況検査とがあります。 <性能評価> 中古住宅の性能評価に関する評価と表示の方法は、一部を除き新築住宅と同じような内容になっています。 @構造の安定性(耐震関係) A火災時の安全 B維持管理への配慮 C空気環境 D光、視環境 E高齢者への配慮 これらの個別性能に関して6分野21項目が評価と表示の対象となります。 ただし、これらすべてが摘要になるのは、新築時に建設住宅性能表示評価を受けている住宅だけですので、この評価を受けていない中古住宅に関しては、Bの維持管理に対する配慮と他の一部項目が除かれますので、全体で5分野12項目となります。 これからどう変わっていくのか? この制度が導入されたからといって不動産の中古住宅市場が劇的に変化するということはありませんが、少しずつ変わっていくのは間違いありません。 前回も少し触れましたが、日本の中古住宅の流通量は米国の25分の1でしかありません。これは中古住宅を購入するにあたってのシステムがうまく確立されていないのが一番の原因です。 それを補うのが今回の住宅性能表示制度です。具体的に考えてみましょう。 中古マンションでしたら建築業者もはっきりしていますし、コンクリート製なので、腐食や雨漏りの心配はそれほど大きくはありません。 比較的安心して購入できますが、一戸建ての場合は買ってから建物に支障が発生したらどうしようというのが購入者の一番の心配事ではないでしょうか。 現在の不動産取引の多くは、売主が不動産業者の場合は2年間以上の期間が義務付けられていますが、一般の人が売主の場合は引渡しから1ヶ月間から数ヶ月だけの間、雨漏り、シロアリ被害、給排水設備の故障、主要構造部の柱などについて責任を負うというのが一般的です。 売主も特別な調査を行うわけではありませんので、購入者が建物の引き渡しを受けてから、万一、なにか支障が出た場合には対処しましょうというもので、その期間が過ぎてしまってから何か起きた場合は自分で対処しなくてはならならないのが現状です。 勿論、取引の多くは何のトラブルもなく取引が行われますが、今回の制度が導入を利用するケースとして、売主が費用は各調査機関によって違いますが数万円程度を負担して、この調査を受け購入希望者に対して自分の家の安全性等をアピールしてスムーズな売却に結びつけるたり、購入希望者が取引の前に調査を依頼して大きな不具合がないかどうか参考にするというような利用場面も考えられます。 瑕疵保険も合わせて利用することも 数万円の調査費用で安心できるならばと、考える人も今後は増えてくることでしょう。また、品確法に規定はありませんが、この調査に付随して瑕疵保険を販売している機関もあります。 調査を行った機関が問題のない安心できる住宅に対して一定期間の間は瑕疵を保証しましょうと言うものです。保険料はかかりますが、この保険が普及するかどうかが今後の中古住宅市場を占うものになるかもしれません。 今回は中古住宅の住宅性能表示についてお話を進めてまいりました。木造住宅は築後15年もすれば資産価値「ゼロ」などと言われて、ほとんど土地の評価額だけで中古住宅が流通している時代は終わります。 これからは、建築時のコストや設備、維持管理状況、リフォームなどの内容に見合った正当な評価を受けた中古住宅をユーザーも安心して購入できるようになっていくことでしょう。 でも、これからの道のりはまだまだ長く、時間がかかります。今回の制度の普及以外にも住宅ローン、土地の価格、資産デフレ、不良債権、不動産の証券化、賃貸住宅の質の向上など様々な良くなって欲しい事、普及して欲しい事がたくさんあります。これからもそんな中から時に合ったトピックスをお伝えしていきたいと思います。 編集後記 巨人軍の松井選手がアメリカへ行ってしまうようです。野球にはそれほど強い興味のないわたしでも、一抹の寂しさを感じてしまいます。 でも、イチロー選手をはじめとした、大リーグでの日本人選手の活躍を見ていると、なんだか自然に勇気が湧いて元気づけられると同時に、学問でもスポーツでも、世界がだんだん身近になっているのを実感します。ノーベル賞も二人同時受賞でしたし。がんばれ!ニッポン! |