不動産についてのお役立ち情報
  〜「税制改正点の具体的な活用術」〜

(住まいるクラブ 2003年3月号 特集記事)

梅の花、桃の花、桜の花と南から花の前線が北上してくる季節になりました。今年の冬は当初の予想では暖冬になるということでしたが、大雪の被害もあったりして、意外と寒い日が多かったようで、冬が寒かった分、春の本格的な訪れが遅くなるのかもしれませんね。

そして、日本国内の景気動向を季節にたとえて考えてみると、やはり今は冬ということになるのでしょうか。4月からはサラリーマン本人の医療費負担が2割から3割になることが決まっていますし、(一部では、凍結しようという動きもあるようですが)5月からは発泡酒、ワインの増税。7月からはたばこの増税とわたしたちの生活に直接かかわるような北風も吹いています。予想どおりなのか、予想外なのかわかりませんが、こちらの冬も長く厳しくなっているようです。

でも、春が来ない冬はありませんし、冬も工夫や考え方しだいで楽しく過ごすことはいくらでもできますので、残り少ないこの季節をなるべく快適に乗り切りたいものですね。
今回は不動産に関連する税制改正点の具体的な活用術について考えてみたいと思います。春を呼び込むそよ風が、静かに吹いてやがて雪解けに向かうことを期待しつつお送りしたいと思います。



今月の <注目 NEWS>

「分譲マンションの値下げで公団に賠償命令」

 2月初旬、東京地裁において「公団(都市基盤整備公団)は分譲価格設定が高すぎて一般公募をしても買手がつかいないと認識していたのに、十分な説明をせずに販売して購入者に対して苦痛を与えた」としてこの手の訴訟としては初めて分譲側の責任を認め、原告団に対して慰謝料など合計で7,000万円弱の賠償を命じた。

これまでも、購入後に値下げされたことに対する集団訴訟が争われているが、いずれも購入者側の敗訴に終わっていた。
ただし、今回の訴訟は原告の購入者が、公団が分譲した団地の賃貸入居者で、建物老朽化による建て替えに伴う優先入居の条件で購入したという経緯が他のケースと大きく違うところ。また、賠償の内容も値下げ部分との差額分は認められず、慰謝料のみの支払い命令にとどまった。



<トレンド>
 昨年の暮の東京地裁の判決で、すでに建築されていて、一部入居者がいるマンションの分譲業者に対して、高さ20m超える部分(7階以上の部分)の撤去が命じられました。これは付近の住民に対して並木の美しさで知られる「大学通り」に対する「景観権」を付近の住民に与えるという、今までに例のない判決でした。
 今回の公団に対する賠償命令の判決も過去に例の無い判決で、今後はマンションを分譲する業者は、より一層の近隣住民や購入者に対する配慮が必要となることが予想されます。



平成14年8月に設計住宅性能評価書を受けた
建築主の属性(戸建住宅)


今月のトピックス <新税制活用術>

前回は与党の税制改正案の内容について触れました。贈与税の相続時精算課税制度の創設など大きな改正点もあり、最近では新聞、雑誌などでも、目にすることも多かったのではないでしょうか。そこで、前回に引き続き、平成15年度の税制改正案について触れていきたいと思いますが、今回は、より具体的にわたしたちにどう関わってくるかを考えていきたいと思います。


住宅ローン控除は今年の方が得!

 まずは住宅ローン控除から考えてみたいと思います。今回の改正点はせっかくマイホームを買ったのに、転勤等でその場所に住めなくなってしまい、やっとの思いで、元の場所に戻ったはいいが、再びローン控除を使おうとしても使えないという現状を見直し、ローン控除の期間内であれば? 再度使えるようにしようとするものでした。
実は、もうひとつ注意しなくてはならないのが、今回の10年間の住宅ローン控除が今年の末日で期限切れになるということです。下記の表を確認していただきながら、来年以降の制度と比較してください。

  現行制度 原則的な制度
概要(入居日) 平成15年12月31日まで 平成16年1月1日〜12月31日
控除率
(×年末借入残高)
全期間1% 2,000万円の部分まで1%
2,000万円超 3,000万円まで0.5%
期間 10年間 6年間
借入残高 最高5,000万円まで 最高3,000万円まで
最高控除額 500万円 150万円

現行の10年間、所得税が戻ってくるという制度は時限立法で、年末でその期限が切れることになっています。残念ながら今回の税制改正の案のなかには再度の延長は盛り込まれませんでしたので、基本的には上記の表のように元に戻ります。景気の動向によっては年末間際になって、再度期間延長や新制度などに変わることも予想されますが。不動産の購入は、買ってすぐ使い始めるというわけにはいきません。特に、土地を購入してから建物を新築しようと計画されている方は、少なくとも準備から入居までは半年程度かかりますので、現行のローン控除の適用を考えるならそろそろ行動を始めたほうがいいかもしれません。


両親の古くなった自宅の売却を機会に!


昔は「一生に一度のマイホーム」というのが常識でしたが、高齢化や地価下落によって、住まいに関する価値観にも少しずつ変化が現れています。例えば、親が働き盛りのときに建てた家も今では古くなってしまい、子供達も独立してそれぞれ都心に近いところに家を借りているので、親だけではちょっと広すぎる。これを機会に、子供達の暮らしている近くに小さめの家でも購入しようと考えている方も多いのではないでしょうか。

 このようなケースは、2世帯住宅ということも考えられますが、今回の贈与税の非課税枠を活用して、両親は売却した資金の一部でマンションや小さめの一戸建を購入して、残った資金を子供に贈与して、子供も近くに家を購入するという計画も考えられます。
 同じマンションのなかに暮らしたり、親がマンションで子供達が近くの一戸建、また、その反対など色々なパターンが考えられます。

 今までは親の売却代金を贈与できる額が少なかったので、どうしても2世帯住宅を選択する場合が多かったようでうすが、これからは余剰資金を子供の世代により多く移動させることが可能になります。
場合によっては「親はリゾート地で子供は都心」という生活もいいかもしれませんね。



子供の住宅ローンの借り換えを機会に贈与!

住宅ローンの金利は過去最低ラインで推移しています。前に借りた住宅ローンの借り換えを計画している方も多いことでしょう。そんなときに、通常の返済額軽減とともに、資金を贈与してもらうことによって更に負担を減らすことも考えられます。
今までは、住宅ローンを親の資金で返済すると贈与税の対象となっていました。今回の改正では2,500万円までであれば(親が65歳以上、子が20歳以上)贈与税の対象となりませんし、子供がその財産をどのように使うかの制限はありません。
毎月の返済を軽減することによって、ちょっとゆとりある生活を考えてみるのもいいのではないでしょうか?



2段階の贈与で孫への贈与額も大幅アップ


今回の2,500万円の贈与は65歳以上の親から20以上の子供への贈与に限られているので、祖父母が孫に直接財産を非課税で贈与するには現行の制度を利用するしかありません。しかし、今回の制度をうまく利用して今までより大きな財産を孫に贈与することも可能です。

 例えば65歳を超える祖父が子に2,500万円(相続時清算)の贈与を行います。その後、子供が2,500万円を孫に贈与すれば非課税(相続時精算)になります。孫がマイホームを購入するときは、親が1,000万円を上乗せして3,500万円を贈与することも考えられます。


まずは従来型贈与を選択しておこう!

今回の相続時精算課税方式は相続人ごとの選択制になっていて、一度この方式を選択すると従来型にもどすことができません。
資産家の方が、いっきに大きく財産を贈与しようとする場合や相続税がかからないことが確実な方をのぞいては、今までの110万円の基礎控除と住宅取得資金贈与(平成17年末まで)を利用しておいて、その枠を超えたときに判断することが結果的には有利になることが多いでしょう。

 また、今回の非課税枠は父、母から別々にこの制度を利用することもできますし、養子縁組を利用する方法なども考えられます。資産家の方が財産を生前に大きく贈与したいという場合には選択幅が広がる制度といえるでしょう。


相続財産の全体をつかむのが大切です。

前回もお話ししたとおり、今回の贈与税の非課税枠は相続税と一体となって課税されます。
ここで大切なのは贈与する側の財産です。
相続税を計算するに際しては[5,000万円+1,000万円×法定相続人の数]の基礎控除や自宅や建物が建っている土地の土地評価減、生命保険の控除など様々な控除があって多くの方は相続税がかかりません。その場合にはこの制度を積極的に利用することによって、親も生きているうちに子供がどのようにつかうかを見届けられますし、生活をより楽しいものに変えることも可能ではないでしょうか?

 一方、相続税の対象となるような、資産家の方は今回の制度を利用するには、贈与時の時価で相続税を計算しますので、値上がりが予想される株式や不動産を現物で贈与したり、お金の価値が大きく下がるような場合でないと、基本的には相続税対策とはなりにくいので注意が必要です。

平成15年度の税制改正の活用術について触れてまいりましたが、いかがでしょうか。相続財産について家族で話し合うことはなかなか難しいことですが、最近では生きているうちに子供や孫と話し合っておこうとする方や、一部を贈与して後はきれいさっぱり使っておこうとする方となど、自分の財産の残し方もバリエーション豊富な時代になってきたようです。
これを機会に不動産を含めた財産をよりうまく活用する方法について話し合われてはいかがでしょうか?


編集後記
 ひな祭りにつきものの「桃の花」は魔よけや邪気を祓ったりするものと考えられているそうです。梅の花とともに春を告げるかわいい花にも不思議な力があるのですね。 さて、「花の季節」は「花粉の季節」でもあります。今年は花粉が多い年と予想されているようです。この予想ばかりは、はずれる事を願うばかりです。



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