(住まいるクラブ 2006年6月号) 雨の多い季節になりました。池、田んぼ、沼などが、私たちの生活の景色から姿を消してしまった今となっては、失われた風景のひとつになってしまましたが、テレビの画面の記憶でしょうか? 梅雨の季節には、木々のこずえからひとしずくひとしずく、雨だれが落ちる緑の葉に、目をよく凝らすと遠くからでは気がつかなかった雨がえるが咽をゴロゴロと動かしながら、そっとあたりの様子をうかがっている様子が目に浮かびます。 井のなかの蛙などと、狭い世界しか知らない意味にたとえられることもありますが、古くは万葉の頃からは詩歌にも詠まれ、12世紀から13世紀の作とされる、教科書でもお馴染みの鳥獣戯画には、うさぎなどと一緒にその擬人化したユーモラスな姿が描かれています。 また、江戸時代後期の作として「やせ蛙まけるないっさこれにあり」という小林一茶の句はあまりにも有名です。こういったことからも、蛙が古来から私たちの生活のそばにいて、親しみをもってみつめられていたことがうかがえます。 梅雨時は、こういった失われた風景がたくさんあることを気づかせる季節かもしれません。 それでは今月も、外出が億劫になるような雨模様の天気のお供にお送りしてまいります。 今月の <注目 NEWS> 「8世紀の“家売ります”の木簡が出土」 福岡県太宰府市教育委員会は、同市内の住宅開発地で、8世紀(奈良時代)に家を売るために使ったとみられる木簡が全国で初めて出土したと発表した。「此」「家」「賣(売)」の3文字が書かれており、現代風に言えば「売家」の現地看板のようなものだったと考えられている。 <トレンド> この木簡は、宅地開発に伴い3月中旬から行っていた発掘調査で大宰府政庁から南西に約1.5k離れた大路と小路によって区切られた大宰府条坊内地点で見つかった。 大きさは、長さ約12cm、最大幅約4cm、厚さ約3mm。 この木簡が現地の「売家」看板と考えられる理由は @木簡に「此」「家」「賣(売)」の3文字が書かれていること。 A木簡が見つかった場所が、掘っ建て柱の穴や井戸の跡がある建物跡近くであること。 B木簡の上部に紐を結びつけていた痕跡があり、人が外から見えるように、屋外の柱にくくりつけていたのではないかとみられていること。 土地や家が自由に売買されるようになったのは平安時代からとされていたので、もし、この木簡が「売家」の意味なら、不動産売買の始まりをさかのぼらせる資料となりそう。 ちなみに、今回出土した、 この木簡の「賣」という文字の下の部分から下が破損していて、続きが書いてあった可能性もあるということなので、更に想像が膨らみそうです。 木簡の欠けた部分には、値段が入っていたのだろうか? 貸家と売家、両方あったのだろうか? 大宰府は九州でも人気のエリアだったから高かったのではないだろうか? 売主の名前があったのだろうか? それとも、売主と買主の間に入って交渉事を進める人がいたのではないだろうか? 大昔の不動産事情がわかると、当時の人たちの生活も、もっとはっきりしてきそうですね。それにしても、1300年も前から現地売出が行われていたかと思うと、面白いですね・・・ (^O^) 何でもQ&A
A.建物を建てるときの耐震基準は昭和56年の建築基準法の改正によって大きく見直されました。この改正後の耐震基準を「新耐震基準」と言います。今回のマンションがこの新耐震基準を満たしているかどうかが、地震に対する強度のひとつの目安になります。 大都市での大きな地震の発生が心配されているそんなさなかに、世間をあっと言わせるような偽装事件があり、地震に対する不安は高まっています。 今回は耐震に対する質問です。建物の耐震基準にについて考えてみます。 新耐震基準とは? 建物の強度を地震の強さで表すと、改正前の建築基準法では震度5程度の地震に耐えることができる住宅であれば基準をクリアしているとされていました。一方、新耐震基準では、震度6強以上の地震でも倒壊しない住宅でないとなりません。 この違いは大きく、先の阪神・淡路大震災のときは、新耐震基準前の建物には被害が多く、新耐震基準を満たしている建物は被害が軽くすんでいるという報告がされています。 いつ変わったか? 建築基準法の改正により、新耐震基準が施行されたのは、 昭和56年(1981年)6月1日 になります。つまり、この日以後に建築確認を受けている建物は新耐震基準を満たしていることになります。 ただ、ここでややっこしいのは、この法律改正以後に建築されている建物です。 例えば、昭和56年の後期に完成しているマンションがあったとします。このマンションは恐らく、建築が始まったのは規模にもよりますが、半年以上前のことだと思われます。ということは、このマンションは6月1日以前に建築確認を受けて着工されていますので、新耐震基準を満たしていない可能性があります。 建築年月日ではわからない このように、特に着工してから、完成するまでに長い時間がかかるマンションやビルでは、できた年が昭和57年だから、即安心とうわけにもいきません。 また、逆のことも考えられます。法律が改正される前は周知期間が設けられます。改正内容が事前に判っていますので、改正前でも新しい基準に沿って、建築確認を申請している場合もあります。 全国の3割が旧耐震基準 東京カンテイという会社が全国の分譲マンションを調査したところ、全国の約3割が新耐震基準前の基準で建築されていると発表しています。数で表すと、旧耐震基準のマンション棟数は全国では22,659棟、1,461,059戸という大きなものになります。当然、昭和56年以前にから、マンション分譲が盛んだった都心に近い郊外には古いマンションが集中していますので、旧耐震基準のマンションの割合が高くなっています。 確認しておくことは? 今年の4月下旬から、中古不動産の売買仲介においては、売買しようとする建物が耐震診断を受けているかどうかの有無を知らせなくてはならなくなりました。 自治体によってはこの耐震診断と診断の結果、補強が必要だと判断されたときの耐震補強工事について補助金を出すところもありますので、検討しているマンションがこの耐震診断を受けているかどうかを確認するのもいいでしょう。完成年が昭和56年、57年の場合は、少なくとも建築確認申請が新耐震基準適用後のものなのかは確認しておきましょう。 大地震が発生したときに予想される被害の大きさに不安を感じている方も多いはずです。マンションもそうですが、戸建住宅についても耐震強度に心配があるものが多く、建物の倒壊による被害をどうやって最小限に抑えるか、大きな課題となっています。 建築物は危険だからと言ってすぐに取り替えることはできませんが、天災は待ってはくれません。不動産を選ぶポイントとしても、災害に対する安全性は見逃すことのできないもののひとつです。 貴方はどっち? 東と西 応仁の乱の昔から、西軍、東軍に分かれて戦をしていますし、今でもお相撲さんは東西に分かれ、その他の競技でも東西戦がよく行われています。 文化面でも東西で比較されるこが多いですね。 これは日本列島の形が東西に長いからでしょうか? でも、今回は戦でもなく、文化でもなく「向き」のお話。 《見ないとわからない!》 東向きのマンションと西向きのマンション。 東側に道路がある土地と西側に道路がある土地とどっちが好いですか?という問いに対する正しい答えは「行ってみなければ判りません」です。 それはそうですよね、マンションがどっちに向いていても、道路がどの向きにある土地でも、立地、周辺環境、広さなど様々な条件によって物件の特徴は、がらっと変わってきます。 不動産は見てみないと判らないとされる所以です。 《それでも比べると?》 それは承知のうえで、マンションや土地の「向き」以外の条件はまったく同じだとしたら。あなたは、東向と西向きではどちらが好いですか? 日本では「西日」の強さが敬遠されるのか、やや東側の方に人気があるようで、不動産の価格査定を行う場合でも、西向きよりも東向きの方が若干有利に計算されます。 確かに、家具や壁紙などは西日を受けて日焼けしてしまうことを心配したりしますね。ただ、最近では昔より朝が遅い暮らしが増えていますので、午前中よりも午後に日当たりが良い方を好む人も増えてきて、以前よりも格差は大きくないようです。 さて、あなたはどちらですか? 「西と東」の料理のお味なら、すぐにでも答えられますが、住まいのこととなるとなかなか悩ましい決断かもしれません。 (・・? 不動産のことば 《礼金》 主に関東地方の賃貸住宅に入居する際に、家主に支払う一時金のひとつ。 関西地方では「敷引(しきびき)」と呼ばれる保証金の償却部分(退去時でも戻らない部分)に当たる。 礼金は敷金や保証金のように契約期間が終了しても返還されない。 この礼金というものが発生した要因は戦後の住宅難とされています。この時代は賃貸住宅の入居者に比べて大家さんの立場の方が圧倒的に強いものでした。 だから、入居できた「お礼」として、支払っていたものが習慣化されたものと言われています。 また、遠くから都心に引っ越そうとする人の親や親戚が賃貸住宅の大家さんに、入居後の面倒を見てもらうように、前もっての感謝の意味で払ったものが習慣化したものという考え方もあるようです。遠くから引っ越してきた人は身近に親戚、知人がいることは多くないので、何かあったときには大家さんに力になってもらわないといけません。礼金をもらう分、昔の大家さんは、入居者に対する義理も強かったのかもしれません。 この礼金という習慣が東北、北海道地方ではあまりないのは、このことを裏付けることのようです。近くに親や親戚がいれば、大家さんに面倒をかけなくてもすむから礼金も必要がなかったのでしょうか。 ちなみに、海外にはこういった習慣は無いそうです。礼金は日本人らしい習慣のひとつとも言えるようです。ただ、これからは家主さんよりも入居者の立場が、益々強くなっていくなか、この礼金という習慣がいつまで残っているでしょうか。 編集後記 サッカーのワールドカップがいよいよ開催されます。日本、韓国共催のときは暴動のようなことはありませんでしたが、海外のサッカーの試合の映像を見ていて驚くのは、何かのきっかけで観客が暴動のような行動をすること。サッカーの歴史と国民気質の違いがそうさせるのかと想像するしかありませんが、今回は開催場所が本場だけにちょっと心配になります。 (>_<) |